THIS IS JAPAN
やけくそのパワーで労働者階級が反乱を起こす英国から、わが祖国へ。20年ぶりに著者は日本に長期滞在する。保育園で見た緊縮の光景、労働者が労働者に罵声を浴びせる争議の現場、貧困が抜け落ちた人権課題、閉塞に穴が開く奇跡のような場所…。これが、今の日本だ。草の根の活動家たちを訪ね歩き、言葉を交わす。中流意識に覆われた「おとぎの国」を地べたから見つめたルポルタージュ。
おすすめポイント
日本の問題が何かを考えるときに、一旦外の視点から物を見てみるのがときには役に立つ。私たちが意識していない部分、気にしていない部分に外の世界の人にとっての当たり前ではない部分があって、それが原因となって問題が引き起こされている場合があるからだ。ブレイディみかこさんは書籍『ぼくはブルーで...』で有名なライターであるが、英国在住の保育士としての顔も持っている。彼女から見た日本の問題とは何なのか。私たちの気づけない視点からの意見は興味深いものにあふれている。
THIS IS JAPAN
ぼくら男性は見えないところでも女性を差別している。
そう感じさせたのは岡村隆史さんのいわゆるキャバクラ発言があったときだ。
問題の発言があったのは、23日深夜に放送された「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」。リスナーから寄せられた、新型コロナウイルスの影響で性風俗店に行けないという内容のメールに対し、岡村さんが「コロナが収束したら絶対面白いことあるんですよ。コロナが明けたらなかなかの可愛い人が、短期間ですけれども美人さんがお嬢やります。これ何でかって言うたら、短時間でお金を稼がないと苦しいですから」などと発言した。 インターネットなどでは、「生活が困窮して性風俗に女性が流れてくるのを楽しみにするのは異常」「女性蔑視だ」などと多くの人から批判が集まっていた。
この発言に対して、僕は当初困っている人が自分の武器を生かしてキャバクラで金を稼ごうとするのは全く悪いことではないし、それを楽しむのも男性の一つの権利として認められるのではないかと少し思ったが、こうした自分の考えにも女性を性的搾取の対象としてしか見ていない面があるのではと気づき、いやになった。
実際のところ、AVのタイトルにもこうした岡村さんのように”新規の素人を楽しみにしている男たち”を引き付けるかのような 「コロナ禍により職を絶たれAV出演へ 素人 無修正」のようなものを見る機会が増えた。(友人談(笑))
いっときの苦境のために体をうってその傷を生涯に残してしまうという厳しい選択ではあるが、ぼくら男に比べて彼女たちは売るものがあるだけまだまし。もし男だったら職を失ったらどうするのだろうか。などと思っていた。
けれども、キャバクラやAVの実態はぼくらがそとから見ている以上に汚い世界で、雇用者が下の立場、公にしたくない立場であることを給料をふんだくる行為が横行していると語られていた。 昔は羽振りの良い職業として知られていた水商売も今では儲かるように外にいる人たちからは見えるけれども、実際は儲からないという難しい商売になっているのだ。
中でも面白いのが階級社会が露骨には見られない日本ではあるが、その反面で特定の部分に非常に強烈な差別があるという点だ。
日本の男性がキャバクラにいく理由を「どうやら「差別」が公認されてるからなんです」と明言している。
p.
海外の男たちのようにパブやバーで女性に話すのではなく、キャバクラで金を払ってまで女性と話すのには理由がある。 彼らは自分が絶対的に優位であるという立場で女性と話す優越感に浸りたいのが心の奥底の本音だという。
日本人は男女問わず自尊心が低い。これがキャバクラのような金を払う・払われる関係の商売を生み出せる原動力となっているのだ。
金を払うかわりに、女性に対してなんでも好きなことを言える。 これがキャバクラにいく男性が真にしたいこと。
この発想はぼくにはなかったが、いわれてみれば無意識のうちにそうした快感を覚えているのではないかと思ってしまった。
根底にある意識は外部からの刺激がないと気づけない。
外部からの刺激を求めてずっと待ってはいられない。自分から外部に刺激を求めに行ったほうが早いのだから。 ブレイディみかこのこの本も刺激を受けられる一冊だ。