英国一家、ますます日本を食べる

著者: ---
読んだ日: ()
出版時期: 2014-05-29
Amazon楽天上記のリンクはアフェリエイトリンクになります
Cover Image for 英国一家、ますます日本を食べる
ブース一家よ、何処へゆく。終わらない怒涛の“食”大冒険。ウニ、カツオ、鮨、MSG、しゃぶしゃぶ、すき焼き、干し貝柱、醤油、和三盆糖、フグ、泡盛、ウミブドウ、豆腐よう、イラブー汁、塩、などなど一家で挑戦。
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • イギリス人の目線で日本を見る
  • 日本すごいね一辺倒じゃないからいいよね

原題は”SUSHI AND BEYOND: What the japanese know about Cooking”で、日本人として、日本の文化についてもそもそもBeyondの前にある寿司の歴史や正しい作り方に関してもなんにも知らないことに恥ずかしくなってしまう人は多いだろう。 大阪で始まった回転寿司が日本の文化の一つとなって、寿司を作る場面を見る機会は減った。自分で魚をさばける人も少なくなって、サクが何かを知らない人もいるだろう。 英国人のひいきめの少ない(わりと親日家になってしまっているので)視点から見る日本は、やっぱり憎めないけどどうにかこの状況を、日本の未来をかえたいなって思わせてくれて、ほんとうに食に満ち溢れた素敵な場所なんだと実感させられる。あとは、僕らがそれに気づいてなにかカイゼンするんだ!

英国一家、ますます日本を食べる

bg h:60% right:33%

本編

魚屋の魚屋@築地市場

目黒寄生虫館に行った話

築地市場は「さかなやの魚屋」だ。 今はないが、1200万人以上のお腹を満たす世界最大の水産物市場だった。

場内には、トゥルー/ワールド社が経営するマグロ取引で世界最大規模の食品商社があるという

MSG 味の素の本社訪問

マイケルが最も警戒しているというグルタミン酸ナトリウムという添加物、いわゆるMSGをもっとも販売している味の素の訪問。

年間1900万トンを生産し、世界各国に輸出している。

マイケルは味の素社の訪問で、彼らの”悪事”をドキュメンタリー風に解き明かそうとして、丸め込まれた様子がおかしく書かれている。

味の素社が容器の穴を大きくしたのは使用料を増やすためではなく、味噌汁などの汁物にいれるときに湿気で出てこなくなってしまうのを防ぐためというもっともな理由がついていた。

結局、旨味という五大味覚の一つとして科学的に認められているものの一つ、トマトやチーズなどに含まれているものを人工的に取り出したものが味の素というわけだ。

MSG自体は、基本的にベーコン味のポテトチップスみたいなもので、最高に洗練された風味とは言えないのだから。乾燥させた昆布と削りたての鰹節でだしを取れば、粉末のだしの素で作るだしよりも深くて満足度の高い味わいがえられる。

p.37

プリングルスは原材料の半分以下がポテトらしいぞ

焼津のカツオ節

うま味の話から、鰹節

カツオは一旦冷凍されて港に届く。これを回答して頭と内蔵を取り除いて茹でる。

そこからすべての骨を抜くという地道な作業をして燻して熟成させる。

燻すのに使う木材(コナラやサクラ)によっても変わるが、焙乾といわれる作業の回数も鰹節の風味を左右する。

通常は10~20回の焙乾を行い、天日に2日ほど当てる。カビ付けはげんだいあは焙乾後に表面を削った後でサウナのような場所で麹菌をつける。

カビ付けによって複雑な風味と旨味、そして強靭な硬度を持った棒に変化する。

焼津を訪れた最初の欧米人はきっと自分に違いないという自尊心から、後先考えずに数千円もだして鰹節を2本買ってしまったが、よく考えてみたら、鰹節を削る道具なんて何も持っていないし、上質の鰹節削り器は買いたくても変えないほど高価なこともわかった。

p.47

カツオというと、高知県が有名な印象を受けるが、高知県は全国で5位の水揚げ量でそこまで多くない。人口が少なく、物流も悪いので水揚げされたカツオの消費量が高くなるのは当たり前だ。 【都道府県】カツオの産地・漁獲量ランキング

日本は会社紹介のビデオを流すところが多いという話を聞いて、これも日本文化の一つなのかと驚いた。 そう言われてみれば、どこもやっているので海外では見ないと知ってびっくりだ。 たしかに海外の観光地やミュージアムもビデオを用意しているところなんてほぼほぼ見たことがないが、日本の観光地はいたるところに紹介ビデオが用意されている。

ワサビ@天城山

ワサビ栽培はできる場所が限られていて、年間を通して12度前後のきれいな湧水がある場所だけだ。

もともとは慶長年間頃から使われ始め、初めは魚などについている細菌を殺す滅菌剤として使われた名残で今日までも寿司や刺身と一緒に出されている

台湾や中国で作られるワサビは湧水ではなく、土で作られていて、化学肥料がたくさん使われていることも多いという。

ワサビはほんとうはサメ皮で下ろすのがいいという。円を書くようにして下ろすことで空気と触れ合って辛味が増す。

お酒を飲むときにワサビを食べると抗菌効果と解毒作用があって悪酔いしない。

道具街@東京、かっぱ橋

かっぱ橋道具街はとおりのいたるところに料理道具やが立ち並びシェフたちが御用達で通う場所。

サメ皮のわさびおろし器を見つけに来たマイケルは結局警察官に尋ねることにした。

その勘のいい警官は、僕がハミングする映画「ジョーズ」のテーマ曲と洗濯板の上ですりつぶすようなアクションを理解してくれただけでなく、それがどの店にあるかを知っていて、自ら僕を案内してくれた。

p.64

ワールドヴィジョン株式会社 わさびおろし わさび おろし器 鮫皮おろし 長次郎 サメ皮おろし器は打つ場所が四角い形の卓球のラケットみたいな形のところに肌色のラバーがついているような見た目のもの。

料理教室

  1. ごく一般的な日本人の家庭的料理教室
  2. 一流の料理人の料理教室
  3. 寿司を作る教室 の3つの料理教室の話。

一般的に欧米人に受ける酢と砂糖の比率は7:5 塩は小さじ2分の1程度。 これを25度前後のご飯にしゃもじを伝わせながら混ぜていく

世界中の料理人に共通するお気楽な優越主義の言葉を吐いた。

「女を扱うのとおんなじだよ。きつくにぎりすぎちゃよくない。口にいれるまでは壊れず、口に入れたらすぐにほぐれるぐらいがいいんだ。握った飯の上は少し山にしたほうが、載せる魚が安定するね」

p.74

最後に、ハヤシさんはとんでもなく有用なアドバイスをしてくれた。 「鮨屋へ行くとね、魚の皮の状態を見るだけでわかるなー 若い盛りの女の子とおんなじだよー 魚が本当に新鮮かどうかがね」

p.78

京都での料理実演

京都の有名な料理クラブ「京都クッキングサークル」で料理の実演の期待に応えようとしてから回った話。

でも、その前の貝柱をほしがったエミルとマイケルのくだりが腹を抱えて笑えるほどおもしろい。翻訳も原文の良さを取り残したような素敵さがあるので、読んでいてほんとうに楽しめる。

枯山水とブーブークッション

枯山水の庭みたいな厳かなところに子どもと行くのはとっても難しい。

京都では、もう二度と庭園は訪ねなかった。

p.94

精進料理@高野山

高野山はいつの間にか、日本人のあまり多くも行ったことがないうちに海外の人にとって人気の観光地になってしまった。

松阪牛

高野山で上品なベジタリアンを食べた後に無性に肉が食べたくなった御一行は松阪牛を食べる。

日本では昔、牛肉を食べることは禁止されていた。

1872年に明治天皇が牛肉を食べて、欧米のための文明開化を目指したことで牛肉が一般に解禁された。 しかし、675年に肉食禁止の勅令が出されてからも、みんなが食べなかったわけではないという。

禁止令には、かつて農耕に必要な家畜も食べてしまうことを解決するために牛や馬を食べることは禁じたが、豚は禁じられていなかった。

野生のイノシシも「山くじら」と言われてぼたん鍋で消費されてきた。

狩猟禁止期間が今も春から秋なのは昔の名残で水田稲作が行われる間に家畜を保護することにあったという説もある。(石毛直道)

今では、もちろんそんなの見る影もない。 敗戦後にアメリカの文化を受けて肉食が一気に広まった。

今では「神戸ビーフ」が世界を席巻している。

こういった牛が世界から称賛を受けるほどのきめ細やかな脂肪を持っている理由として都市伝説的に言われているのが牛にビールをかけてマッサージすることで脂肪が肉の間にくまなく広がるという話。

これを聞いてマイケルは牛をマッサージすることを目標として松阪牛の牧場へ行ったのだった。

海女@伊勢湾

ミキモトパールはうどん製造業者の御木本幸吉が世界で初めて真珠の洋食に成功して創業した会社で鳥羽市にある。

今も海女が酸素ボンベ無しで潜るのは採りすぎてしまうのを防ぐためという。

香川の世界一の醤油

香川のキッコーマンとは比べ物にならないくらいの本物の醤油を作っている蔵 「かめびし屋」を訪問した話。

醤油は日本の料理を形成する上で外せない調味料であり、一般家庭のどこにでもある。 キッコーマン社が日本でも世界でも市場を独占しており、千葉県の野田で作った醤油を運河を使って東京に出荷していたのが始まり。 今ではアメリカやオランダ、中国にも工場を餅、年間400万リットル以上を生産している。

醤油の製造は意外に簡単で、戦前まではごく普通に家庭で醤油が作られてきたらしい。 原料は大豆と焙煎して砕いた小麦 麹菌で大豆と小麦を発行させ、そこに塩水を加えて「もろみ」にしたものを半年間熟成させると糖分とアミノ酸がむすびついて深いキャラメル色のアロマ香る液体となる。

しかし、もっと伝統的な製法で醤油を作っている会社もある。 その一つが今回の訪問先「かめびし屋」

日本で唯一の「むしろ麹法」(: むしろに大豆を広げて発行させてもろみを造り2年半かけて樽の中で熟成させる)を今も行っている。

キッコーマンと大きく違うのはかめびし屋は大豆を丸ごと使うが、キッコーマンなどは脱脂加工大豆を使う点だ。^[脱脂加工大豆は大豆油を取った後の副産物で、エコでもあるが、本来の旨味などは失われてしまっている。またチッソが多くなりすぎるのでできた醤油を水で薄めたり、薄めた分を補うためにアミノ酸などを添加することも多いという]

%% シングルエステートコールドプレスエクストラヴァージンオリーブオイル %%

モデナには100年もののバルサミコ酢があるように、醤油でも似たようなことができないかと計画中。 他にもバルサミコ酢のようにアイスクリームにかけたり、チョコレートなどと合う醤油も準備していると言うから楽しみな会社だ。

かめびし屋 公式オンラインショップ 日本で唯一のむしろ麹法による長期熟成こだわり醤油をお届けします。

にがり入りこいくち醤油 500ml 1013円で、キッコーマンと比べると高いが、作り方を聞くと高くないのではと感じでしまう。

ふぐ@下関

マイケルってたまに、牛をマッサージしたいとかふぐの肝をこっそりなめてみたいとか、アホでかわいいことしたがるからおもしろいんだろうね。

坂東三津五郎フグ中毒死事件 - Wikipedia 石川県名産の河豚の河豚の卵巣の糠漬けの毒素分解の仕組みは未だ不明である

沖縄の長寿の秘訣

沖縄本島には今もアメリカ軍の関係者が5万人住んでいる 人口は131万人なので

意外にも沖縄は一人当たりの昆布の消費量が日本で一番多い。 これも長寿の秘訣だろうか。

大宜味村は3500人いる村民の3分の1が65歳以上で、100歳以上の人が10任意女王いる、世界一長寿の村だ。

そこで「豆腐よう」を食べてはいた。

沖縄珍味の豆腐ようとは?特徴的な味や食べ方、起源、豊富な栄養を解説! - ご当地Japan とても不思議な食べ物らしい。

そして、塩。ぬちまーすの塩の話。

最後は城崎温泉

城崎へは、新幹線とはまったくかけ離れたペースのレッshで、3時間かかってついた。 駅で待っていたのは、伝説的に有名な旅館、西村屋本館のスタッフで、車に載せられて目抜き通りを数分走り、旅館の門をくぐると、そこはもう19世紀の世界だった。

p.189

おわりに

日本人を、日本の食文化をすべてひとまとめにして語ることはできないけど、マイケルが言うように、僕らのベースには四季があって、それを使ってなにかを表現したり、それ自体に感謝したりするというのが自然に見られるという。

なのに、僕らは何の四季もとりえもないトマトだけのパスタや、おしゃれな名前のついたフレンチに囚われて本来の「和食」から遠ざかってしまっている気がする。

「日本すごいね」一辺倒の番組から学ぶことは何もなく、外部からの視点で日本の凄さも特異さや、おかしいのにそこに気づかないおもしろさなど色々な部分を見ていくのが大事だよね。

やっぱり食っておもしろい。 やっぱり日本っっておもしろい。