新 地政学 世界史と時事ニュースが同時にわかる

著者: 祝田秀全
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本の価格: 1760
出版時期: 2021年08月20日頃
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大航海時代から東西冷戦まで近現代史も地政学で解説するから相乗効果で理解度UP!
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • 世界史と時事ニュースが同時にわかる

ニュースを見ていても、いまいちピンと来ない世界情勢。 どうしてロシアはウクライナにそれほどまでにこだわるの? どうしてロシアの暴挙を世界全体で抑え込めないの? 日本も取り巻く諸問題が複雑な理由もこれを読めばわかる。

新 地政学 世界史と時事ニュースが同時にわかる

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基礎知識

地政学で重要なのは「ランドパワー」と「シーパワー」

ランドパワーは大陸の内陸部に位置し、海を十分に活用できず、交易や人の移動手段などを陸上交通に頼っている国家のこと

ロシアはランドパワーの国でありながら、歴史的に不凍港を求め続けてきた(今もそう)

シーパワーとは国境の多くが海に面している海洋国家のこと。 海を通じて世界各地にアクセスできるため交易などで有利な立場にある。

地政学では「シーパワーであり、ランドパワーでもある状態」を実現するのは困難であるとされる。

かつての日本はそれを求めて、第二次世界大戦で敗北した。 今の中国は海洋への進出を加速しており、中国の挑戦が成功するかどうかは地政学的にも興味深い点といわれる。

19世紀のタイが独立を保てたのは右隣のベトナムなどのフランスの植民地と、左隣のビルマのイギリスの植民地の緩衝地帯にあったために、あえて軍事進出を行わずに緩衝地帯とされた。 ただ、緩衝地帯は逆に紛争が起きやすい地域でもある。

地政学から学ぶ近現代史

15世紀は大航海時代の始まりと世界の一体化の加速

  • オスマン帝国の領土拡大
  • ポルトガル・スペインの新航路開拓
  • シーパワーを持てなかった明

16世紀はポルトガル・スペインの全盛期

  • ポルトガルが東南アジアを収めた
  • コロンブス以降の南米の銀がヨーロッパの価格革命を引き起こし、情勢を激変させた
  • 銀貿易でメキシコの銀と世界がつながった
  • 宗教改革とオランダ独立

17世紀はシーパワーの覇権国がオランダに代わり、イギリスが猛追を始めた

  • ライン川河口に位置するオランダが貿易の中継拠点として発展した
  • スペインは戦争や侵略による借金がかさみ衰退を始めた
  • 毛織物産業で発展したイギリスは自国に有利な航海法を設定して海上覇権を握った

18世紀はライバルのフランスを抑えながらイギリスが世界進出を加速した

  • フランス=スペイン帝国は周辺国に反対され大帝国の誕生は阻止された
  • イギリスは大西洋三角貿易で奴隷とアメリカの砂糖やコーヒーの貿易体制を構築した
  • フランスは植民地戦争でイギリスに敗北した
  • ランドパワー大国のロシアが不凍港を求めて、南下政策を強めた

19世紀前半はナポレオン後の混乱を収めるウィーン体制、清はアヘンに苦しむ

19世紀後半は植民地戦争が激化、日本も近代化に成功して対外進出を加速した

  • プロイセン主導でドイツ帝国が誕生し、ビスマルクによる巧みな外交戦略で地位を高めた

ランドパワー新興国ドイツの台頭と第一次世界大戦の勃発

  • ランドパワー大国ロシアを日英同盟の日本が破る
  • イギリスとドイツが対立を強め、三国協商と三国同盟が完成する
  • サラエボ事件で第一次世界大戦が勃発
  • 疲弊したヨーロッパを横目にアメリカがヨーロッパ、アジアへの介入を強めた

第二次世界大戦

  • 太平洋をめぐる日米の対立
  • 世界恐慌が招いたファシズム体制
  • 陸海の二面作戦を展開し日本は消耗した

戦後期は、米ソを中心に世界が東西で対立

  • 自由主義国と社会主義国の対立
  • リムランドをめぐる対立
  • アメリカの庇護下で経済大国となった日本
  • 社会主義大国中国とソ連の対立

冷戦の終結後、さらに世界の混乱は加速

  • ドイツ再統一とEUの誕生
  • 中国の東シナ海、南シナ海への進出

日本をとりまく状況は

韓国は米中どちらの動きも意識して動かないといけないため、日本との関係が悪化する場合もある

アメリカは日本を社会主義国からの防波堤に位置付ける方針に転換して同盟を結んだ ー 戦後期の防衛予算を在日米軍に負担してもらうことで予算を経済政策に回すことができた

今では「思いやり予算」という形で莫大な予算(2000億円前後)がアメリカに払われている

ロシアにとって北方四島は不凍港のウラジオストクから太平洋に抜けるための国後水道を守るうえで最重要

中国の覇権と東アジア

ミャンマー情勢に対して中国が静観する理由は、中国雲南省からインド洋に抜ける陸路を可能性として保持しておきたいため

「シーパワー大国」アメリカ

カナダ、メキシコと比べて圧倒的に強いアメリカはむしろ「島」

NAFTAは3国間の貿易を促進したが、副作用も大きかった。

メキシコには安価なアメリカ産のトウモロコシや小麦が流入したため価格が下落し小規模農家の生活を直撃した。結果として農民の一部は麻薬の生産に手を染めたり、アメリカへの不法移民になったりした。 アメリカでも関税が撤廃されたことで自動車産業などの多くの製造業が人件費の安いメキシコに生産拠点を移したため、対メキシコ貿易赤字が悪化した

2020年に貿易保護色の強いUSMCAが発行された

マイアミの真下、キューバとの関係改善は民主化次第

ヨーロッパ

EU, NATO の東方拡大とロシアの緊張

不凍港、黒海のセヴァストーポリを死守したいロシアにとってクリミアは最重要

地球温暖化が進めば、北極海が不凍になり、ヨーロッパと極東を結ぶ最短経路がロシア北部のルートとなる

思惑がからむ中東情勢

英米に翻弄されてきた中東諸国

ペルシャ湾をはさんで対立するペルシャ人でシーア派のイランと、アラブ人でスンナ派のサウジアラビア その対立は周辺国にも飛び火している

トルコはロシアとEUとを天秤にかけてどっちつかずの政策を展開している

ほかの地域

ASEANは中国の支援を受けたい国と南沙諸島への進出を警戒する国とで足並みがそろっていない

アフリカは最大の連合AUで政治・経済の改善を狙う

中南米では中間層が薄い経済格差の課題が発展を妨げている