「食」の未来で何が起きているのか  「フードテック」のすごい世界

著者: 石川伸一
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本の価格: 1100
出版時期: 2021-10-04
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「フード」×「テクノロジー」で日本の食事は、どう変わる?知れば誰かに話したくなる、これが「食」の最前線!
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • 食の最前線で起こっていることを知れる
  • 海外の事例から日本の事例まで
  • コオロギ食べるしかないぜ

「食」の未来で何が起きているのか  「フードテック」のすごい世界

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フードテックの話題の中心は?

  • 植物たんぱく質による代替肉
  • ゲノム編集
  • 3Dフードプリンター
  • AI,ロボット,ドローン
  • スマート調理器具

すでに実用化しているものから研究途上のものまで様々な事例を紹介する。

「食」と「テクノロジー」が融合する世界へ

フードテックの市場規模は今後700兆円に膨らむ。

現在の食料の問題点

  • 食料需要の増加:人口増加による
  • 魚の乱獲による漁獲高減少
  • 家畜の温室効果
  • アニマルウェルフェア

日本では

  • 飲食店の人手不足

人口爆発を買いけるする切り札は「培養肉」⁉

培養肉:

家畜や魚などの筋肉から少量の細胞を取り出し、体外で組織培養してつくられる人工肉

今のところ認可が下りているのはシンガポールだけであるが将来的に認められる国が増えるのは間違いない。

日本人は食へのこだわりが強いため培養肉への抵抗は大きいと考えられる。 このため、より早く食生活に浸透する代替肉は植物性だろう。

将来的には昆虫性のたんぱく質も浸透するかもしれない。

培養肉の今

  • スタートアップ企業は世界に60社以上
  • 日本にもインテグリカルチャーなどが存在する
  • 日清食品も培養肉事業に進出している

1kgの牛肉を作るのに必要な飼料用トウモロコシは11kg。 人口増加で肉の需要も高まる中で資源、農地不足が懸念される。

日本のインテグリカルチャーは2028年には培養肉の大量生産が実現し、スーパーで気軽に買えるようになると予想している。

シンガポールで売られている培養肉は会員制レストラン1880デノミ売られている。 メニューはグッドミートというブランドのチキンナゲットで価格は約1800円だそう。

代替技術が生み出す「もどき食材」の可能性

培養肉とは異なるアプローチのたんぱく質食品が「もどき肉」ともいわれる植物由来の代替肉である。

牛肉の生産には大量の飼料が必要なことは述べた。 しかし、地球温暖化に関する点でも問題がある。 問題とされるのは牛のげっぷに含まれるメタンなどのGHGである。

代替肉はイスラム教やヒンドゥー教、ユダヤ教の人にとっても気軽に口にできるタンパク質となるだろう。

代替肉市場の覇権はビヨンドミートとインポッシブルフーズが競い合っている。

ビヨンドミーとは2009年設立。 安全性の高い代替肉を追求する。非遺伝子組み換えのえんどう豆を主原料にココナツオイルなどを添加して味わいを向上させる。 肉の色もビーツやリンゴなどの天然色素を使用している点もこだわりが強い。

インポッシブルフーズは2011年設立。権威ある生化学者であるパトリック・ブラウンが創業者。

遺伝子組み換えした酵母から大量のヘムを生産して代替肉に加えている。 ヘムによって本来の肉と脳科学的に認識できる代替肉を目指す。

日本では植物性油脂大手、業務用チョコレート市場世界シェア3位の不二製油が大豆ミートに力を入れてきた。 1957年の需要がないころからいっかんして将来的に役立つことを予測し造り続けてきた。

2020年には需要増加に合わせて千葉に新工場を建設した。

大手食品メーカーも続々と参入が始まっており市場の期待が高まっていることがわかる。

ほかの代替肉

サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業ジャストは2013年に完全植物性マヨネーズ「ジャストマヨ」を開発し、2020年には卵料理を作れる「ジャストエッグ」を発表した。

2016年創業のグッドキャッチフーズは6種類の豆を混ぜてマグロの代替品を作り出した。 海藻由来の不飽和脂肪酸を加えることで健康面もカバーした。

他にも海藻と植物から作られる代替エビ、培養ミルクなどがある。

培養母乳市場も培養ミルクの技術を応用して参入が増えている。

明日の食糧支援不足をすくうテクノロジーとは

この章では昆虫食に焦点を当てている。 きっかけは国連食糧農業機関FAOが2013年に昆虫食を奨励する報告書を出したことによる。

昆虫食のメリットは環境面でのグリーンさである。

無印良品が発売したコオロギせんべいも日本に割と衝撃を与えただろう。

ユダヤ教の食事に関する規定「コーシャ」が唯一食べてよい昆虫とされる。 ハーゴルという会社はバッタを粉末にしてプロテインパウダーの販売を事業としている。

新たなたんぱく質源「藻」

とくにスピルリナという淡水域の藻が注目を集める。 タンパク質含有量は乾燥重量で肉のおよそ3倍に相当する。

WHOやFAOも太鼓判を押すほどの食材。

日本の「タベルモ」という会社はスピルリナを扱うスタートアップ企業。 スピルリナの欠点の一つに加熱・乾燥によって栄養価の多くが失われると同時にえぐみや苦みが出る点がある。 タベルモは急速冷凍の技術で風味・栄養価を損なわない加工に成功した。

ほかにもキノコ肉なるものもある
二酸化炭素からタンパク質を取り出す微生物にも注目が集まる
ミドリムシも以前として注目度が高い

「農」と「テクノロジー」が融合する未来図

第4章では「スマート農業」が話題の中心となる。

日本でも人手不足が深刻化している。 また、熟練のいる労働が多いのも農業の難しい点だ。

活用されるロボットとして

  • ロボットトラクター:自動で田植えなどができる
  • 自動収穫ロボット:画像判定によってトマトを収穫
  • 水やりロボット:AIを用いて適切な水やりを判断
  • 合鴨ロボット:合鴨と同じ効果のあるロボットの開発:=>アイガモは逃げたり、襲われたり、成長した合鴨の処理などに課題がある
  • ドローン
  • 宇宙農業

世界が注目!日本の魚生産イノベーション

世界的に魚の需要が高まっている。 先進国では健康志向の高まりや家畜の環境インパクトから魚食が人気になった。 新興国も生活にゆとりができたために魚の消費が増えた。

中国は9倍、インドネシアでは4倍もの魚を食べるようになったという。

魚の多くは資源枯渇である。 魚の漁獲量制限に関して有効な規則はない。

ただ、世界全体でみると養殖が需要の半分を賄っており、その傾向はさらに広がる。

第5章では魚生産イノベーションに焦点を当てている。

近大マグロ、近代ウナギ

2002年に32年の歳月をかけてクロマグロの完全養殖に成功した。

2014年にレッドリストに二ホンウナギが載った。 シラスウナギを獲って養殖するのが一般的であったが、シラスウナギの量も減ってきている。

完全養殖は成功しているが、民間にはコスト面の課題から普及していない。

近大はこの難題に挑戦している。

他にもブリとヒラマサを掛け合わせたブリヒラなど18以上の魚の研究をしている。

クエとタマカイ、イシダイとイシガキダイのようなハイブリッド種も注目だ。

高知県はカツオの養殖に挑戦している。
魚と同時に陸上で植物も生産するシステム

植物を出荷できる面と水を浄化できるのがメリットだ。 近大のウナギの例では空芯菜を栽培しているという。

ヒラメに緑色の光を当てると成長が早まる。

海と環境が似るためストレスが小さくなり、1.6倍もの速度で成長した

ゲノム編集で筋肉モリモリマッチョマダイをつくる

ゲノム編集は遺伝子組み換えとは違い、自然界で起こる突然変異を人為的に短いスパンで起こしている。 このため安全性は高い。 2012年に開発された「クリスパー・キャス9」などによってさらに研究が加速した。

筋肉モリモリ真鯛は京大と近代の共同研究によって開発された。 筋肉の発達を抑えるミオスタチンという遺伝子を切断することによってつくられた。 ベルジアンブルーというヨーロッパ産の突然変異によって筋肉もりもりになった肉牛から着想を得た。

新型コロナで加速する外食産業の大変革

外食産業の課題

  • 人手不足
  • 新型コロナウイルス:=>接触を避けたい

同様の課題は米国でもより顕著。 低賃金かつほとんどチップがもらえない調理師の人気は低迷 している。

第6章では調理を自動化するマシーンがいくつか紹介されている。

中でもコンビニの揚げ物調理ロボットとアプリ+自販機入れたてコーヒーがとくに興味深かった。

揚げ物ロボットは「ホットスナックロボット」 二との手を介さずから揚げやコロッケを作れる。 れいとうこにあらかじめいれた食品を油で揚げ~切って、保温庫に入れてくれる。

もう一つはAIカフェロボット「rootC」 スマホアプリから野みたいコーヒーをアレンジしてセレクトすると受け取り時間に淹れたてのコーヒーを自販機のロッカーから受け取れるというもの。

とくに揚げ物はフードロスにもつながりやすいのでコンビニにつく前にアプリで予約して買うという流れもいいのではないかと思った。 新規の新たな技術同士の組み合わせにも期待。

スマート調理機器で、食卓がガラッと変わる!

この章ではスマート調理機器が紹介されている。 どれもパーソナライズしてデータをAIが活用するというもの。 もしくは、自動でやってくれるというもの。 それらの組み合わせだったが、個人的に嫌いだし必要ないと感じた。

健康と栄養バランスを守るヘルステック

フードテックは個人情報を活用した例が多いのであまり発展には期待していない。 ピックアップするのは

  • 完全食パスタ
  • 介護食フードプリンター
1色で1日に必要な1/3の栄養を摂れるパスタ

その名もベースパスタ タンパク質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどを含む。

2019年には完全栄養パン「ベースブレッド」を開発した。 2021年にも「ベースクッキー」を出している。

嚥下力が下がった高齢者を助けるデリソフター

介護食はつくる側の負担も大きいが、食べる側も孤独感や満足感の問題がある。 デリソフターはパナソニック社内で出された案から生まれたもの。 完成している料理を柔らかくする調理機器。 仕組みは隠し包丁をたくさん入れて高圧をかけることによって内部まで効率よく処理される。 見た目が変わらないのも特徴。

3Dフードプリンターによる介護食の課題アプローチ

3Dフードプリンターはインクの代わりに食材のペーストを使う。 データを入力して、食べ物を立体的に印刷できる。

よりクリエイティブな見た目や、趣味嗜好に合わせた料理を作り出せる。 応用として介護食や宇宙食への貢献が考えられる。 焼き魚すら本物に近い触感を再現できるというからおどろき。

日本では山形大学で研究が盛ん

おわりに

2021年9月のでーたであるため、1年近くが経過してさらに多くの技術が生み出され、確立していっただろう。

さらに注目が集まる理由として、欠かすことのできない「食」にかかわっているということがあげられる。 ぼくらも多角的な視点でフードテックを見つめていくのが良いだろう。