推し、燃ゆ
推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。第164回芥川龍之介賞受賞。
おすすめポイント
- ☑推し活が主人公!
推し活。男子だと坂道系グループや他の女性アイドルを推している人。女子だと韓国系アイドルやジャニーズ、他J-popアイドルを推している人。 他にも俳優だったり、グラビアだったり自分の好きなことをやっているあこがれの人を推している人がいる 正直なところぼくには推している人がいない。そのせいでオタクの心がわからない。 そんな人にとっても推しの存在の大きさ、推しに影響される日々、生活の楽しみ、お金の使い方。そしてそれらを含めて「推す」ということがわかる。 今の時代を反映した切実で苦しい物語
推し、燃ゆ
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。 まだ詳細は何一つわかっていない。何ひとつわかっていないにもかかわらず、それは一晩で急速に炎上した。 寝苦しい日だった。 虫の知らせというのか、自然に目が冷め、時間を確認しようと携帯をひらくとSNSがやけに騒がしい。
p.3
語りだしからいきなり引き込まれる。 推しがどんなひとかもわかっていないのに、いきなり殴った話からだ。 読者にとっての衝撃はとっても大きく一気にここで話の興味に片足を無理やり突っ込まされてしまう。
「おばあちゃん死んじゃった」
母はリモコンのボタンを何回か乱暴に押し、テレビを消す。 蛍光灯と換気扇を消すと沈黙があり、すでに赤い目をした姉がお茶のペットボトルに水を入れる。
「着替えて」
唐突だった。 大袋の中に入った個包装のチョコを食べて言って、いま食べたそれが最後の一個だったよ、と言われるみたいに死が知らされる。
p.79
例えが秀逸でうまい。
人を殴った推しがどうなったか、そしてそれに影響される「あかり」はどうなってしまうのか。
推し活の生き様について考えさせられるとともに客観的に見ることができる彼女と、現実にいる女の子は違うところもあるのだろうなーとも想った。 人それぞれの推し方があるのだし、誹謗中傷に対しての推しの反応も、そもそも推しを推し続けるかも違うのだろう。