我が手の太陽

著者: 石田 夏穂
読んだ日: ()
本の価格: 1650
出版時期: 2023年07月13日
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Cover Image for 我が手の太陽
“お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。お前自身が、誰よりも馬鹿にしているというのに。”腕利きの溶接工が陥った突然スランプ。日に日に失われる職能と自負。異色の職人小説。第169回芥川賞候補作。
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • 溶接工について
  • 現場で働く、、、

溶接工としてはたらく伊藤、周りからうまいと称賛されてきたが最近は不調なのかうまく溶接ができなくなっている。 他の溶断工や現場監督、検査員とのやりとりから見えてくる工事の世界とその中での一人のやりとり。

我が手の太陽

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溶接工の話

全く溶接の話がわからなかったので、一度読んだ後に下のような溶接の話をいくつか読んでみるとさらにたのしめると思う。

数ある工種の中で、溶接工は格段に実入りがいいし、何より現場の花形だから、昔は皆こぞって溶接工になりたがったものだ。そう簡単に誰でもなれるわけではないから

p.40

溶接工の仕事の細かいところにまで着目して描かれている。 溶接の仕事はアルゴンガスをつかって酸化を防いでいるために、夏場でも日を扱っていながら扇風機を使うことができない。 溶接や溶断のビルの建設や解体現場にエアコンがあることなどほとんど稀なので、溶接工のように「火 」を扱う工事現場の職人は夏がもっともきついのだ。

ラストについては、僕はあんまり理解できなかった。 著作の「我が友、スミス」でもラストに近づくに連れて面白さを失っていった気がしたが、今回はラストになって一気に置いていかれてしまった気がする。

自分のプライドの高さや技術への慢心が随所から見て取れる。 しかしながら、原因不明のスランプに陥る。

安全を疎かにする溶接工は、下手。

「それよく言う人いますけど、そんなわけ無いでしょ。そんな安直な仕事じゃねえから」

p.84

でも、俺が一番すごいだろ?

こういう仕事をしていると、いつも下に見られるんだ。工事現場にいる人は、皆「工事現場の人」だ。そうじゃないのに。俺はその辺の「工事現場の人」じゃないのに。誰もそのことを知らない。

p.137

お前が一番、火を舐めてるんだよ。

p.138

スランプに陥ったのは年齢のせいか、あの検査員のせいでスランプから抜け出せないのか、病気なのか、恐れが出たのか。

イトウ、に共感はあまり感じないが、彼の一つ一つの行動はぼくがやっているような感じがして、一文一文、次の展開に緊張感があった面白い作品だった。