南アルプス
おすすめポイント
かつて20年前の当時の南アルプスの面影が大きな写真とともに僕らの眼前によみがえってくる。 深南部とよばれる南アルプス、光岳以南のニッチな山々にも繰り出す筆者の様は南アルプスの知っても知り尽くせない奥深さを最も知る男だろう。 そして僕が今文章を書いていて思うのがかつての山を重石人々の文章力の高さよ。 それなりの教育を受けており知的水準は彼らのほうが圧倒的に平均より上位だろうが、知的だけではなく誌的な部分にまで秀でる彼らには脱帽せざるを得ない。 静岡新聞が出しているだけに静岡びいきもあって僕らとしては喜ばしい。十分に楽しめる内容で最近読んだ静岡新聞が出している最新登山ブックの100倍楽しめる内容だった。 ほんとうに近頃の人間の情報の薄さに辟易してしまう。 この僕の文章の情報の薄さに物足りなさを感じたらお近くのショップか図書館でこの本を探してみて読んでほしい。
南アルプス
南アルプスの山の標高ランキング
- 北岳 3192m
- 間ノ岳 3189m
- 悪沢岳 3141m
- 赤石岳 3120m
- 荒川中岳 3083m
- 荒川前岳 3068m
- 中白根山 3055m
- 西農鳥岳 3051m
- 塩見岳 3047m
- 仙丈ケ岳 3033m
- 農鳥岳 3026m
- 聖岳 3013m
14. 甲斐駒ヶ岳 2895m
-
兎岳 2818m
-
上河内岳 2802m
-
薬師岳(鳳凰三山) 2780m
-
鋸岳 2685m
42. 笊々岳 2629m
- 光岳 2591m
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静岡市の整備した山小屋
南アルプスの山小屋は北アルプスのそれと比べて市営のものが多い。これは小屋事情の違いが存在するからに違いない。
南アルプスは秘境として知られ長らく一般登山者の入山を拒んできた。
しかし、一部の人間はそれでも登山をする。
小数の人間のための経営は当然成り立たないがこれでは安全上必要最低限なラインを下回ってしまうとされ公共のお金を使って簡素な小屋を整備した。
しかし、開発が進み、計器が良くなり、装備が進歩した結果、熟年の登山ブームが続いた。 一般の登山者も南アルプスに押し寄せた結果、口々に粗末な小屋に対して不平を口にした。 そこで静岡県は90年前後から山小屋整備計画に着手し光小屋や荒川小屋など10の小屋のすべてを建て替えた。
建設費用は総額8億円となったが、現在となってみればおおむねよい事業であったのだろう。 しかし、かつての小屋の面影が失われてしまったことに、一部の南アルプスマニアはため息を漏らした。
メモ
- 東海フォレスト前身の大倉喜八郎は赤石だけに200人の大名登山を決行したが、山頂に風呂桶を担いで湯につかったらしい
- 池之沢小屋付近の池之沢の池は堆積により徐々に消えてしまったが水面に映る生林や山並みが格別な秘境感を生みだしていた
- 鳳凰三山のオベリスクに初めて上ったのはウエストンで、唯一彼が初登頂した場所といわれる
- 彼はこの結果、地元の人々にたたえられ、宣教師であるのに神主にならないかと誘われたらしい
- 2023年もうさぎだが、「うさぎ」と山名につくのは静岡県の兎岳のほかに福井、石川県境の赤兎山(1629m)があるそう
- やっぱり悪沢岳の呼び名の確立はまだまだ遠い道のりそう。奥深すぎて信州側と井川側とでも呼び名が違うし、そもそも呼び名を付けたがるグループも少ないことから南アルプスの山の名前は定まりにくいという。
- 井川スキー場いまもがんばれ。
おわりに
南アルプスの偉大さ、奥深さをさらに感じさせてくれる本だった。
最近の本でもやはり南アルプスの人気はいまひとつ。 人気なのは富士山のついでに日本第2位の北岳~くらい。
それでも一部の人にとてつもなく愛される山であると強く感じた。
最新の本やWebサイトではわからないかつての人間の身近な思いを紡ぎ取ることができてすこしうれしいとともに、こうした人間が徐々に徐々にこの世から失われてしまうことの悲しさもあった。 当時の彼らのなかにも「開発」による自然破壊に疑問を投げかける人間もいたのにもかかわらず、今こうなってしまった理由、そしてあまりにも稚拙な行動の遅さに今、ぼくはすこし疑問符付きの問いを投げかけたい。