乳と卵
姉とその娘が大阪からやってきた。三十九歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。姪は言葉を発しない。そして三人の不可思議な夏の三日間が過ぎてゆく。第138回芥川賞受賞作。
おすすめポイント
- ☑独特の文体
- ☑読みやすいけど優しくない
乳と卵とかいて、チチトラン。タイトル通り豊胸したいと嘆く母と、生理に、初潮に悩む思春期の娘の話。たった二人の話じゃなくて、彼女らが東京の妹(おばさん)のところで過ごす時間を描いたのが楽しめる設定。
乳と卵
卵子というのは卵細胞って名前で呼ぶのがほんとうで、ならばなぜ子、という字がつくのか、 っていうのは、精子、という言葉に合わせて子、をつけてるだけなのです。 図書室には何回か行ったけど本を借りるための手続きとかがなんかややこしくてだいたい本が少ないしせまいし暗いしなんの本を読んでるのんか、人がきたらのぞかれるしそういうのは厭なので、最近は帰りしにちゃんとした図書館に行くようしてる。 パソコンも好きにみれるし、それに学校はしんどい。 あほらしい。 いろんなことが。 あほらしいとこんなふうに書くことがあほらしいけど,学校のことは別に勝手に過ぎていくことやからいいけれど、家のことは勝手には過ぎてはいかないので、ふたつのことは思えない。 書くということはペンと紙だけあったらどこでもできるしただやし 何でも書けるのでこれはとてもいい方法。 これは記録といいます。 いや、という漢字には厭と嫌があって厭、のほうが本当にいやな感じがあるので、厭を練習。 厭。厭。緑子
p.7-8
この文章、文体に惹かれるなら読み進めていいけど、こういった漢字で続くので人を選ぶと思う。
巻子とその娘、緑子が巻子の妹、東京に住む「わたし」のもとに訪ねてくる話。
緑子は、母に対しても誰に対しても筆談でしか応じなくなり、記録を取っているノートの内容が文章と交互に流れてくる不思議な設定、構成の小説。
楽しく読める。
文体だけじゃなく、卵子とか生理とか豊胸手術とかのふんわりした話なので苦手な人はおかえりください。
あなたたちの恋愛は瀕死
は独特の世界観。
ついていけないほどの世界観だけど、30代の女性のことを思い出す、もしくは想像することのある女性にとってはもしかしたら楽しめるかも。