万引き家族
「犯罪」でしかつながれなかった―。万引き・年金不正受給・虐待...。是枝監督が自ら描く、映画ではかなり尽くせなかった「家族」の在り方。
おすすめポイント
- ☑第71回カンヌ国際映画祭の最高賞「パルム・ドール」獲得
- ☑家族のありよう、愛情について考える
- ☑小説初級~中級
一昔前に話題になっていた本を、読まずに置いていたのがもったいなく思えてくる良作。成人を迎えるまでは家族の形とか、愛情について考える機会は普通に生まれ育った人にはない。 しかし、この中の登場人物はその愛情がゆがんだ形でしか与えられていなかったり奪われていたりする。徐々に明らかになってくる「万引き家族」のカタチが深く考えさせる。
万引き家族
目次
抜粋
「みんななるの?」 祥太は振り向いて治を見た。
「みんななるんだよ。男はみんななるんだよ。安心した?」 「うん。ちょっと病気かと思ったからね」 祥太は照れ臭そうに言った。 治はオクテだったから、自分の身体の変化に気づいたのは中学に入ってからだった。 そのころには父親はもういなかったし、相談できるような友だちもいなかった。
いつかこんな会話を、親子でしてみたいと治は思っていたのだ。 というよりも、父と息子というのはこんな会話をするんじゃないか。そう思っていたことを実践してみたのだ。
p.196
この治の思う、父親像、そして親子でしてみたいという願望的な理想像というよりも、最後の一行で描かれるこれが「ふつう」なのかもしれないという文章に悲しくも温まる。
実際の父親像がないことが暗に示される悲しさがあふれ出る。
『万引き家族』、最初のタイトルは『声を出して呼んで』だった!リリー・フランキーらが語る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
からもわかるように、子どもたちから「お父さん」や「お母さん」と呼んでほしいと願う偽の父、治と母、信代のところどころに出てくる信条に打たれる。
用語から見えてくる小説
ドテゴロ
- 意味: 童貞殺しの略
風俗店のオプションで、脇チチが見えるニットのワンピースを着て旨を強調する動きを見せつける内容
- 使用例
ドテゴロお願いします!
死に水保険
- 意味: 孤独死を防止するためにだれかと暮らすこと
死に水: (末期の水) 臨終の際に亡くなった方の口に水を含ませのどを潤すこと。
- 使用例
「いいんだよ、私は誰にも気づかれずに死なないための保険に入ったの........」
p.104