プラスチックスープの海

著者: チャールズ・モア/カッサンドラ・フィリップス
読んだ日: ()
本の価格: 2090
出版時期: 2012年08月
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Cover Image for プラスチックスープの海
海洋に投棄された、想像を絶する量のプラスチックごみは、いまや食物連鎖の中にまで入りこんでいる。微粒子・ボトルキャップ・レジ袋は、海鳥や海棲哺乳類の餌にまぎれ、遺棄漁具は、生き物にからみついて死に追いやっている。すべての命の源である海は、知らぬ間に、使い捨て社会のごみ捨て場になってしまったー。この流れを止めるエコロジカルなイノベーションとは何か?プラスチック普及の歴史から、その毒性、生分解性樹脂の開発まで、海洋ごみ第一人者が調査船での冒険談を交えて、徹底的に解明する。
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • ”太平洋はプラスチックのスープだ"

じゃっかん2011年頃の話題と最新ではないが、客観的で意見の押しつけが少なかったので色々と勉強になった。 プラスチックスープ。初めて聞いたときに衝撃を受けた言葉とその実態。 自分の目で見たことがないから確証はないけれども、浜辺をあるいても実感する今の現実は東南アジアの一部の場所や太平洋のプラスチックベルトのあたりでは凄まじいのかもしれない。 普通に生きているようでは実感することがないから、行動に移せない。そんなのが今の世の中を作ってしまっているのだろうから、なにかしら、それを実感した僕らがアクションしていかないといけないんだろう。

プラスチックスープの海

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第8章 パッケージ黄金時代

企業が目指す「持続可能性とは」

ユニリーバが善良な糸を持ち、努力をしていることは認めるものの、 ポールマン氏の声明を次のようにおきかえてみたくなる。

「株主のみなさん!この持続可能ってやつですごい山を当てられますよ!われわれが持続可能でやっていると聞いたら、 客は大喜びでどんどんかってくれます。 イノベーション!そうです! そしてここが肝心なんだけど、包装や容器をシンプルにするために、まっさらの材料と水とエネルギーの使用が減れば経費が削減され、利潤は上がるんですよ

p.149

たしかに、グリーンウォッシュのように「持続可能性」や「SDGs」をうたっているが、実態は何もいいことをしていない。みたいなのも世の中に多い。

でも、経費が削減されるのはとても大事なことで、それが利潤が上がるならそれは会社の経営の持続可能性につながる。 持続可能性をうたわない商品をつくる企業との間の競争で、そのパイを奪うならそれはすばらしいことだ。

そして、企業全体が「持続可能」をうたう企業ばかりになったときに、本当に「持続可能な経営」をする差別化戦略を取る企業が出てくるはずだ。そうなれば今のグリーンウォッシュがでてくる現状もあながち悪くない。

一番怖いのは「グリーンウォッシュ」が増えてしまうことでそういった持続可能性を逆に歌わなくなってしまうことだろう。

第9章 つむじ曲がりの科学

海上輸送中のコンテナの流出はプラスチック流出にも、船の安全な航行の問題ともなるが公にされることが少ない。

国際海事法で選手に賠償責任はないので船会社も荷主も保険会社も流出事件を隠そうとして、その近隣の海域の人が苦しむだけらしい。

第10章 ドキュメンタリー映画の撮影

アンソニーアンドラディらの「ヨーヨー理論」

  1. ふわふわ海を漂うプラスチックに藻や珪藻類などが付着して繁殖
  2. 着床植物の重みで沈み始めて、太陽の光が届かないところまで沈むと、藻類は死ぬ
  3. 死んだ藻類をバクテリアが食べて、分解される
  4. 軽くなったプラスチックは海面を目指す

第11章 漁網の行く末

漁業の操業形態と漁具はプラスチックごみにとって避けては通れない。

これが事実だ。

今のところほとんどの人が漠然と、もしくはまっさらの危機意識しか持っていないだろうが。

第12章

海洋生物を殺す原因の一つに風船がある。

割れにくいホイル風船。

アメリカでは年間8千万ドルの税をおさめるという統計があるため、うかつに規制ができず、環境団体との火種となる

空中を漂っていても、海面でうかんでいるときの風船の分解速度は非常に遅いという

アシカなどの海洋生物が誤食しなくても、その食物連鎖の下にいるイワシなどがプラスチックを誤食していたら防ぎようがない。

第13章 忍び寄る毒物

なにが毒性がつよいかとかあんまわかっていないからこそ怖い

第14章

水中は陸に比べてプラスチックの温度が上がりにくく、ゆっくりとしか崩壊が進まない

さらに藻類がつくとプラスチックの周りを覆って太陽による分解を防ぐ

砂浜のプラスチックと海洋を漂うプラスチックは基本的に全く分解度合いが異なり、海洋のプラスチックが分解されているならそれは砂浜にあったものが流れ着いたことが多い

すなはまで見つかるプラスチック

よく見つかるものの一つがスペーサーといわれるもの。

これはカキ養殖に必要なもので、東日本大震災でも三陸沖のスペーサーやら色々なものがすべて流出してしまったらしい。

そのプラスチック問題からスペーサーを竹に変える動きがあるがまだまだ普及途上。 岡山の竹業者さんとカキ養殖のスペーサー | ラ・メール ~海からのプラスチックレポート~

カキ養殖の光と影――海岸に拡がるプラスチックの「雪」。広島の市民はどう動いているのか | ハフポスト NEWS

第15章 プラスチックの足跡を消す

リサイクルはプラスチックの役割や種類が多すぎて難しい。

重要なのは統一すること。

  • 製造段階での統一
  • 回収での統一
  • リサイクル過程での統一

ドイツなどではゴミの焼却などの加熱処理は最終手段であるが、日本ではアホみたいにサーマル”リサイクル”などという言葉で欺瞞がまかり通っている。

興味深いのは、

ダイオキシンはプラスチックが燃やされるさいに塩素がある、生成される。 (中略)

海水で濡れている、すなわち塩化ナトリウムで覆われているプラスチックごみを燃やすと、ダイオキシンが出る。

p.293

第16章 3RよりだいじなR

国連は毎年漁網と延縄の10%は投棄されるか流出すると推定している。

プラスチック対プランクトン比 という比率

そして3R(Reuse, Recycle, Reduce)より大事なのは”Refuse”

拒むこと。

おわりに

プラスチックの毒性とか、どれほどが海に流出しているのか、分解するのか

まだまだわかっていないからこそ、規制に踏み切らない人と、厳しい規制をかけたい人どちらもいると思う。

僕も完全な現実をしれないけど、砂浜を歩いたり、ドキュメンタリーの魚の胃の中を見たりしたときにこの世界はおかしいって違和感を感じる。

たぶん、僕は正しい。 ただ、この正しさをひとに伝搬できるようにするにはまだまだ何らかの部分がかけているのだろうから色々な応報で模索を続けていくしかないんだろう。

プラスチックスープ、そこに浮かぶ魚を食べる僕ら。

しかし、その魚をとるという行為が同時にそのスープにさらに調味料を足してしまっているのだと思うと...