イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか

著者: 渡辺一夫(森林インストラクター)
読んだ日: ()
本の価格: 2200
出版時期: 2009-10
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日本を代表する樹木三六種を、「森の案内人」のエキスパートである著者が解説。外見の特徴、生き残るための多様な戦略を解説ー身近な自然木の魅力にあっと驚く本格的樹木ガイド。
楽天Booksより引用

おすすめポイント

  • 樹木好きにおすすめ
  • 樹木好きでないと最後まで読み切らずに飽きてしまうかも

イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか

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生物の進化の過程を聞くと途方もないスケールの事象が多すぎていまいち実感がわかないことが多い。

例えばとても複雑な機能をどのように考えても進化の過程だけで獲得できないように思える場面だ。

樹木でいえばイヌビワがその例だ。

イヌビワは年中イチジクのような果実をつけている。 イチジクのようであるから当然花は咲かないけれども、その受粉方法がほんとうに高度だ。 高度すぎて逆に危ない。

イヌビワの送粉者はイヌビワコバチという昆虫である。

逆にこいつ以外では受粉することができないため彼らがいなくなれば絶滅してしまう。

けれども、イヌビワコバチは自分の子供をイヌビワ自身に植え付ける。このため、受粉されたイヌビワの果実は種子を作り出すことができなくなってしまう。

これは一見共生のようには思えない。 しかし、イヌビワコバチが子供を産めるのは雄花に入り込んだ時だけで、雌花はイヌビワコバチの産卵管が届かない長さになっているため産卵できないという工夫が凝らされている。 このため入り込んだイヌビワコバチは残念ながらそこで人生に終止符を打たなくてはならない。

こんな意味わからん送粉方法をいったいどのような経路で獲得したのだろうか。 しかし世界的にみるとこうした送粉方法をとるイヌビワは700種類程度存在しているという。

なんとも奥深い。 人間でさえ思いつかないような共生の(だましあいの)方法を植物は長い時間をかけてやってしまうのだ。