けもの道の歩き方
現代社会の隙間を縫うように暮らす。獲って、さばいて、食べる。「生活者としての猟師」が今、求められている。野生動物たちと日々行き交い、これからの自然を思う、20のエッセイ。
おすすめポイント
- ☑狩猟に関連する人すべてが読め!(ください)
この本は狩猟を始めてみようとする人だけでなく、狩猟にまったく興味のない人、そして狩猟という行為に対して残酷などのネガティブなイメージを持っている人全てにおすすめできる。 狩猟の楽しさだけでなく、厳しさや現状の課題、今後の展望などすべてがわかりやすく説明されている。 これを読んでどう思うかは各人の自由だけど、これを読まずして狩猟は語れないんじゃない? 参考文献がいっぱいついていてどれも面白いので狩猟関連について詳しくなりたい人もおすすめ!
けもの道の歩き方
1 猟師の目に映る山と動物たち
シカ害は
- 林業への損害
- 植物を食べちゃうことによる生態系への損害
- 列車や車とぶつかることでの損害
それだけじゃなくて
- マダニを持ち込む
ことが問題となっている。
シカが増えるとそいつがもっているマダニやヤマビルを広範囲に撒き散らして繁殖させてしまう
シカと補助金
京都市では2013年度からシカ1頭に付き補助金4000円が支給される 全国的にも似た傾向が続いている。
捕食者がいない環境ではシカは1年で2割増加するらしい。
数を適度に管理するためにも狩猟で定期的に数を減らしていかないといけない。
でも、シカを駆除しようという動きが推進されていても、駆除されたシカの処理に困って山に放置していくケースが多いのでちょっと色々問題とか突っ込みたくなる気持ちとかが多すぎるよね。
ジビエの活用がだいじ
ジビエは店で食べるとあんなに高いのに、シカが捨てられているなんてダイヤモンドよりクソ産業かよ? 今はフランス料理店の多くはニュージーランドのアカシカなどの輸入に頼っているらしいけど、供給能力的にはふつうにまかなえる。
でも、補助金が出ることでもいいことばっかじゃない。
補助金が高い隣町に申請したり、 死んでいるシカを駆除と偽ったり、 ウリ坊も殺しまくる(別に問題ではないけど、ちょっと痛ましいよね)
イノシシくんは鼻がいい
鼻がいいのでわな猟の難易度は高い。
なのに堂々と金属の箱をおいておいた箱罠には引っかかることが多い。
これは場所の変化に対して警戒心が高いので、獣道に設置したくくりわなには警戒するけど、里山に近いところにおいてある箱罠への警戒心は低くなりがちなのだ。とか
里山の耕作放棄地や休耕田はイノシシの生活空間になりやすい
2 身近な動物たちとの行き交い
カラスくんは獲物を食べる
ワナに放置されたイノシシなどを埋めても昼はカラスが夜はキツネがやってきてレストランになる。
京都市の生ゴミは20%が手つかずの食品で、20%は食べ残しらしい
ゴミ袋の半分くらいがカラスのごちそうと考えるとゴミ集積場でのカラスの行動にも納得・脱帽できる
カモ
海ガモは動物を食べるので陸ガモに比べて狩猟人気は低い
カモも農作物被害を引き起こすらしく、地域によっては有害駆除も行われている
キジ
人気の狩猟対象
自生していない北海道や南西諸島にコウライキジが放たれ野生化し、一部の島では問題となっている
飛ぶのが苦手で、テープレコーダーやキジ笛をつかった狩猟は禁止猟法
ハト
よく見かけるドバトは外来種
大和/飛鳥時代に持ち込まれたので古くから馴染んでいる
狩猟対象はキジバトのみでドバトは非狩猟鳥獣
ドバトと違い群れずにつがいで過ごす
ドバトが狩猟対象でないのは伝書バトが打たれてしまうのを防ぐためと言われているらしい
ヒヨドリ
害鳥といってしまえるが、オレンジなどに来る様子はかわいい。
ムクドリ
1994年にヒヨドリとともに狩猟対象に
スズメやヒヨドリよりもおいしくないのと、数が減ると昆虫が増えて逆に農作物被害が増えるということもあるらしいのでそこまで人気ではない。
なるほど、いざ都市部のムクドリを一斉に駆除すると毛虫やら虫やらが大量発生することにもなりかねないのかも
カワウ
1日あたり、500gの魚を食べる大食漢で各地の漁業関係者を悩ませる。
カワウはコロニーを形成して営巣するのだが、その際に大量の枝をおったり、糞をしたりするために周辺の樹木が枯れる被害があるらしい。 竹生島ではかつて4万羽のコロニーがあったらしい。 今では1万羽になっているらしいがそれでもすさまじい。
ウズラ
かつての狩猟鳥獣だったが、今では数が減って回復しないので2013年に非狩猟鳥獣になった。
ウズラのたまごは飼育された品種改良ウズラのメスが産んでいる
コジュケイはウズラによく似た外来の狩猟鳥獣。 大日本猟友会が三宅島で生け捕りにしたものを全国各地に配給した結果全国的に野生化した。
ただ、数が減少傾向にある。 いいのか?わるいのか?
3 狩猟採集生活の今とこれから
ベジタリアンの中には、狩猟と相反しない人もいる。
これは僕の中ではとても腑に落ちる。 世の中の意見としてはベジタリアンなどは肉食を嫌うと思っている人が多いが、実際は様々だ。
とくに僕の中でのベジタリアニズムは森林破壊や地球環境への負荷の高さからきている。
そんなわけで自ら命をいただくという行為を通して肉食をしていく行為というのはとてもベジタリアンに近い部分もあると思う。
自然を知る。狩猟をやる。
この2つは密接に関わっている。
そして、それは僕らの暮らしの中の一つ一つの行為にもとても関わっている。
自然からの恩恵を直接的に受ける暮らしに近づければ近づくほど、自分の暮らし方が自然にとって良い方向に変わっていくのはどう見ても当たり前だ。